デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

学校とデジタル化:損害賠償されたときの費用など(著作権(6))

(着手金15万円程度+成功報酬)  

 学校だよりなどへのイラスト掲載で損害賠償を求められた場合については、概ね10〜20万円の賠償額になっている・・と、以前に紹介しましたが、このほかに弁護士費用などもかかってきますので留意が必要です。

 学校での著作権侵害が問題となった場合には、おそらく市町村教委の担当者が、市町村の顧問弁護士に相談することになるので、あまり先生方が弁護士費用等を気にする必要はないかもしれませんが、個人のブログなどでイラストを引用した場合には、弁護士費用などの負担も自己負担となりますので、少し見てみたいと思います。。

 弁護士事務所などのホームページなどで相場を見てみると、弁護士先生に対応を依頼する場合、着手金が15万円程度と、経済的利益の16%などの成功報酬を支払うこととなるようです。

 You Tubeの動画で、個人のブログに無許諾で写真を掲載してしまい、150万円の損害を請求された、という経緯を紹介したものがありました。弁護士に対応を依頼したところ、相手はすぐに請求を断念したものの、約40万円の弁護士費用を支払うことになったとのことです。。(成功報酬が150万✕16%=24万円)

ブログの画像が著作権侵害に!150万円の損害賠償を請求された話(後編) - YouTube

 気をつけましょう。。

 

(損害賠償が認められる要件)  

 著作権法の第114条には、著作権侵害の場合の損害賠償の額の推定の規定がありますが、その前提として、著作権侵害の損害賠償は、民法の709条に基づいて行うこととなります。

民法
不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 法律を少し勉強した人であれば、ご存知のことと思いますが、損害賠償を求める場合には、相手方が故意または過失によって権利を侵害したことが必要です。つまり、権利を侵害しても過失がなかったと認められれば(正確には、訴える側が侵害者の過失を証明できなければ)、損害賠償をしなくてもすむわけです。

 ただ、他人の著作物を使用してしまう場合、通常は、うっかり勘違いして・・とか、つい確認を怠って・・いうことが原因と思いますので、過失がないというのは、なかなか難しいと思います。「フリー素材」で検索したHPにあったイラストだったというケースを見たことがありますが、これはやはり確認不足と言わざるを得なさそうですよね。。

 実際に過失がなかったと認められた例としては、広告での写真の無断使用が争われた裁判例セキスイハイム事件(大阪地方裁判所判決平成7年1月7日))で、「セキスイハイムは広告を制作することを事業とする会社ではなく、このような会社が広告制作会社から写真を借り受けたとき」には、著作権者の許諾を逐一調査確認するまでの注意義務はないということで、過失なしとされた例があります。

 なお、著作権侵害に関する刑事罰については、故意の場合が対象ですので、うっかり・・という過失の場合は対象となりません。

 

(ポイント)  

・損害賠償を請求されて弁護士に依頼をすると、数十万円かかる。

・過失がなければ、損害賠償は不要(だが、そうそう過失なしとは認められない。)

 

(参考)

ura49.hateblo.jp