デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

学校とデジタル化:引用のルール(著作権(5))

(その他の権利制限規定)  

 著作権法では、学校教育での利用以外の場合についても、著作者の権利が制限され(つまり、著作権者の許諾なく)、著作物が自由に利用できる場合についての定めが置かれています。

 例えば、私的使用のための複製(第30条)や引用(第32条)などの場合があります。これらは、比較的分かりやすいので説明は不要かもしれませんが、レンタルCDを借りて自分で聞くためにカセットテープに録音したり、レポートや論文に他の文献を引用したりするような場合と同様に、インターネット上の著作物についても、私的使用のためにダウンロードしたり、自分のブログに引用したりすることができます。

(複製物の私的使用には多くの除外規定があります(例:コピーガードを解除しての複製は不可)ので、私的使用なら何でも自由にコピーできるわけではありません。)

 

(引用のルール)  

 「引用」の場合には、著作物を自由に利用できますが、一定のルールの下で行うことが必要となります。学校で、子どもたちがインターネットの記事を引用するような場合には、引用のルールを守って行うことが必要ですので、少し細かいですが規定ぶりなどを見ておきたいと思います。

 まず、著作物を「引用」して利用する場合については、以下のような条文が置かれています。

 (引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 (略)

 

 例えば、レポートを作成する際に、他人の著作物の一部を利用したりする場合が「引用」に該当します。この条文上ですと、「公正な慣行」とか、「正当な範囲内」とか抽象的ですが、文化庁の「令和5年度著作権テキスト」(P62)では、以下のような説明がされています。

・「公正な慣行」に合致すること(例えば、引用を行う「必然性」があることや、言語の著作物についてはカギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること)

・報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること(例えば、引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であることや、引用される分量が必要最小限度の範囲内であること、本文が引用文より高い存在価値を持つこと)

 

 なお、引用の際には、以下の条文の規定に基づいて、「出所の明示」も必要となります。

 (出所の明示)
第四十八条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
 一 第三十二条・・・・の規定により著作物を複製する場合

 

(ポイント)  

・著作物を「引用」する場合は、著作権者の許諾なく利用が可能。

・引用のルールとして、

 「公正な慣行」への合致(カギ括弧で引用部分を明確にする、等)、

 引用の目的上「正当な範囲内」であること(分量が必要最小限度である、等)、

 引用する著作物の「出所を明示」すること、が必要。

 

(参考)

www.bunka.go.jp