デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第211回国会のデジタル関係法(20)民事関係手続デジタル化法による改正

(民事関係手続デジタル化法)

 今年の通常国会で成立した法律のうち、デジタル関係の法改正を見ていく20回目です。今回は、閣法60号として提出された「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」について見てみます。

 提出理由は、以下の通りです。

民事関係手続等の一層の迅速化及び効率化等を図り、民事関係手続等を国民がより利用しやすいものとする観点から、民事執行手続等における電子情報処理組織を使用して行うことができる申立て等の範囲の拡大、申立て等に係る書面及び裁判書等の電磁的記録化並びに映像と音声の送受信による期日における手続を行うことを可能とする規定の整備、民事執行手続等の申立ての手数料等に係る納付方法の見直し、公正証書の電磁的記録化及び映像と音声の送受信による公正証書の作成手続に係る規定の整備等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 法務省から提出されている法律です。211回国会での内閣提出法案は60本でしたので、これで最後になります。

 

(法律の概要)

 法務省の提出法案のHPには、法案の概要などの資料がなく、一番短そうな資料は、法律案の要綱になりますが、PDFで101ページありました。。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00323.html

 これはとても読めないなあ、、と思いまして、大きな流れだけ確認しますと、昨年(令和4年)5月に成立した「民事訴訟法等の一部を改正する法律」で、民事訴訟の手続がデジタル化されたのですが、今回の法改正では、民事執行、倒産手続、家事事件の手続についてデジタル化するということのようです。

 いくつか当時の報道がありましたので、参考にご紹介します。

www.nikkei.com

www.asahi.com

 

(公証人法の改正)

 今回の改正では、民事関係手続のデジタル化に関する法律のほか、公証人法も改正されており、公正証書の電子化や、公正証書作成の際にウェブ会議の利用を可能とする改正が行われています。(従来、公正証書の作成は公証人の面前での手続が必要でしたが、一定の場合に、ウェブ会議の利用を選択できるようになりました。)

 具体的な条文は以下のとおりです。第36条が公正証書の電子化、第40条がウェブ会議利用に関するものです。

 (書面又は電磁的記録による公正証書の作成)
第三十六条 公証人は、第二十八条又は第三十二条の規定による嘱託があった場合には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものをもって公正証書を作成するものとする。
一 次号に掲げる場合以外の場合 電磁的記録
二 電磁的記録をもって公正証書を作成することにつき困難な事情がある場合 書面

 (公正証書の記載又は記録の正確なことの承認等)
第四十条 公証人は、その作成した公正証書を、列席者に読み聞かせ、又は閲覧させ、列席者からその記載又は記録の正確なことの承認を得なければならない。
3 公証人は、嘱託人からの申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、公証人及び列席者が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、前二項に規定する行為をし、又はこれをさせることができる。ただし、当該申出をした嘱託人以外に他の嘱託人がある場合にあっては、当該他の嘱託人に異議がないときに限る。

 

 余談ですが、いずれも現時点では未施行です。