デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第208回国会で成立したデジタル化関連法(9)補遺(所得税法等)

(これまでの経緯)

 本年1月17日から6月15日までの会期で開催された第208回通常国会で成立したデジタル化に関連する法律について、以前に「第208回国会で成立したデジタル化関連法(1)〜(8)」として、行政キャッシュレス化法の制定や、自動運転等に対応する道路交通法の改正、民事裁判手続のデジタル化を進める民事訴訟法の改正など、ひと通り見てきたところですが、所得税法等の改正でも、税務手続のデジタル化・キャッシュレス化に関する改正が行われていましたので、追記しておきたいと思います。

 

所得税法等の一部を改正する法律)

 税制改正に関する所得税法等の改正ですが、3月22日に成立し、31日に交付されています(法律第4号)。

 改正内容は、令和4年度税制改正に関するものですが、その中で、 税務手続のデジタル化・キャッシュレス化による利便性の向上等に関する改正も行われています。

www.mof.go.jp

 

税務手続のキャッシュレス化

 まず、税務手続のキャッシュレス化についてですが、登録免許税や自動車重量税におけるキャッシュレス納付制度が創設されました。自動車重量税に関する改正の一部を抜粋すると以下のようになっています。

 

自動車重量税法(昭和四十六年法律第八十九号)

(電子情報処理組織を使用する方法等による納付の特例)
第十条の二 自動車検査証の交付等を受ける者若しくは車両番号の指定を受ける者又は次条第一項の規定による委託を受けた納付受託者(第十条の四第一項に規定する納付受託者をいう。次条において同じ。)は、当該検査自動車若しくは届出軽自動車につき課されるべき自動車重量税の額に相当する自動車重量税又は当該委託を受けた自動車重量税を、第八条から前条までの規定にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて財務省令で定めるものにより国に納付することができる。

(納付受託者に対する納付の委託)
第十条の三 自動車検査証の交付等を受ける者又は車両番号の指定を受ける者は、当該検査自動車又は届出軽自動車につき課されるべき自動車重量税の額に相当する自動車重量税を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法を使用して行う納付受託者に対する通知で財務省令で定めるものに基づき納付しようとするときは、当該納付受託者に納付を委託することができる。
2 (略)

 

 同じく208国会で成立した「行政キャッシュレス化法」と似たような規定となっていますね。

 

税務手続のデジタル化

 次に、税務手続のデジタル化についてですが、法律案の要綱から、関連部分を抜粋すると以下の8項目がありました。

・ 支払調書等の提出の特例について、磁気テープを提出する方法を除外することとする。(所得税法第228条の4関係) 

・ 電子情報処理組織を使用する方法により確定申告書等に記載すべきものとされている事項を提供しなければならない法人の添付書類記載事項の提供方法から、磁気テープを提出する方法を除外することとする。(法人税法第75条の4関係)

・ 電子情報処理組織を使用する方法により地方法人税確定申告書等に記載すべきものとされている事項を提供しなければならない法人の添付書類記載事項の提供方法から、磁気テープを提出する方法を除外することとする。(地方法人税法第19条の3関係) 

・ 調書の提出方法について、磁気テープを提出する方法を除外することとする。(相続税法第59条関係) 

・ 支払調書等の提出の特例について、磁気テープを提出する方法を除外することとする。(租税特別措置法第42条の2の2関係) 

・ 金融口座情報の自動的な提供のための報告制度について、報告金融機関等の報告事項の提供方法から磁気テープを提出する方法を除外することとする。(外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律第41条の2関係) 

・非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度について、報告金融機関等の報告事項の提供方法から磁気テープを提出する方法を除外することとする。(租税条約等の実施に伴う所得税法法人税法及び地方税法の特例等に関する法律第 10 条の6関係)

・国外送金等調書及び国外証券移管等調書の光ディスク等による提出の特例制度について、磁気テープを提出する方法を除外することとする。(内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第4条関係) 

 

 改正内容は、それぞれの手続における、提出媒体から「磁気テープ」を除外するというものです。「磁気テープ」の部分を削除するだけの改正なので、条文は省略させていただきます。

 なお、財務省の「令和4年度 税制改正の解説」のページを見ると、以下のような説明がありました(「所得税法等の解説」P95)。

 「磁気テープについては、近年その提出の実績がなく、また、今後の提出も想定されないことから、上記⑴③の光ディスク等を提出する方法から、磁気テープを提出する方法が除外されました(所法228の 4 ①二、措法42の 2 の 2 ①二、国外送金等調書法 4 ②二、所規97の 4 ⑤、措規19の16⑤、国外送金等調書規11⑤)。」

 

その他(税理士法の改正)

 以上のほか、税理士法の改正では、税理士業務における電磁的方法の利用促進や、税理士名簿等について電磁的記録で作成できることととする改正が行われました。具体的な改正内容は、以下のようになっています。(条文の一部改正の部分だけ、赤文字にしています。)

 

税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)

(税理士の業務における電磁的方法の利用等を通じた納税義務者の利便の向上等)
第二条の三 税理士は、第二条の業務を行うに当たつては、同条第一項各号に掲げる事務及び同条第二項の事務における電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。第四十九条の二第二項第八号において同じ。)の積極的な利用その他の取組を通じて、納税義務者の利便の向上及びその業務の改善進歩を図るよう努めるものとする。

(税理士名簿)
第十九条 (略)
2 (略)
3 日本税理士会連合会は、財務省令で定めるところにより、第一項の税理士名簿を電磁的記録磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。第四十一条及び第四十八条の十において同じ。)をもつて作成する調整することができる。

 

 税理士名簿等に関する改正は、従来「磁気ディスクをもって調製」することとされていたのですが、デジタル化の進展を踏まえ、磁気ディスク以外の記録媒体やクラウドサービス等を利用して作成できることが明確化されたものです。税理士名簿のほか、税理士業務に関する帳簿、税理士法人の名簿についても、同様の改正が行われています。

 

(参考)

www.mof.go.jp

 

ura49.hateblo.jp