デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

国税関係のデジタル化について

国税関係のデジタル化)

 前回、電子帳簿保存法をご紹介して、国税関係の帳簿等の保存のデジタル化についてお話しましたが、民間企業等で保存する書類のデジタル化だけではなく、国税関係では、申告などの行政手続についても、デジタル化の取組が進んでいます。

 そういう状況を無視して、国税関係のデジタル化という文脈で、電子帳簿保存法だけを紹介すると、関係者の人から「この〇〇が!」と怒られそうなので、少し予定を変更して、国税関係の行政手続のデジタル化について、国税庁ひいてはデジタル庁を応援する気持ちで、心を込めて見ていきたいと思います。

 

e-Taxとは)

 e-Taxとは、国税庁の運営する「国税電子申告・納税システム」のことです。国税庁のHPでは、e-Taxについて、「所得税、消費税、贈与税印紙税、酒税などの申告や法定調書の提出、届出や申請などの各種手続をインターネットを通じて行うことができるもの」と説明されています。(詳しくは、参考欄にリンクを貼っておきますので、ご参照ください。)

 e-Taxは、2004年から運用が開始されていて、元財務官僚の高名な大学教授の方(高橋洋一先生)が、立ち上げに関わったと以前何かで見ましたが、よく覚えてません。でも、高橋英樹さんが、利用を呼びかけていることは、よく覚えています。

 なお、e-Taxを使ったオンラインでの申告等が可能なのは、デジタル手続法第6条、第7条などに基づいて、財務省令(国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令)で、国税関係の法令で定める手続のデジタル化を可能とすることが定められているからです。デジタル手続法が、各行政手続きのデジタル化に重要な役割を果たしていることが分かりますね。

 余談になりますが、この国税関係の主務省令では、デジタル手続法第9条の作成等に関するデジタル化の規定は置かれていません。これは、国税関係の書類の作成・保存に関しては、電子帳簿保存法でデジタル化が可能とされているためです。

 

(電子申告の義務化)

 最後に、近年の動きについてですが、平成30年度税制改正により、「電子情報処理組織による申告の特例」が創設され、大企業等が行う法人税等の申告については、e-Tax国税電子申告・納税システム)により提出しなければならないこととされました。詳しくは、参考欄の国税庁HPをご覧いただければと思いますが、他の法律にあるような「デジタル化が可能」という段階を超えて、「デジタル化が義務」とされているわけですね。

 ちなみに、法人税法の条文を見てみると以下のようになっていました。

 

(電子情報処理組織による申告)
第七十五条の四 特定法人である内国法人は、第七十一条(中間申告)、第七十二条(仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等)若しくは第七十四条(確定申告)又は国税通則法第十八条(期限後申告)若しくは第十九条(修正申告)の規定により、中間申告書若しくは確定申告書若しくはこれらの申告書に係る修正申告書(以下この条及び次条第一項において「納税申告書」という。)により行うこととされ、又はこれにこの法律(これに基づく命令を含む。)若しくは国税通則法第十八条第三項若しくは第十九条第四項の規定により納税申告書に添付すべきものとされている書類(以下この項及び第三項において「添付書類」という。)を添付して行うこととされている各事業年度の所得に対する法人税の申告については、これらの規定にかかわらず、財務省令で定めるところにより、納税申告書に記載すべきものとされている事項(第三項において「申告書記載事項」という。)又は添付書類に記載すべきものとされ、若しくは記載されている事項(以下この項及び第三項において「添付書類記載事項」という。)を、財務省令で定めるところによりあらかじめ税務署長に届け出て行う電子情報処理組織国税庁の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下この項及び第四項において同じ。)とその申告をする内国法人の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用する方法として財務省令で定める方法により提供することにより、行わなければならない。ただし、当該申告のうち添付書類に係る部分については、添付書類記載事項を記録した光ディスクその他の財務省令で定める記録用の媒体を提出する方法により、行うことができる。
2〜5 (略)

 

 すみません、また取り返しのつかないことをしてしまった気がしていますが、赤字の部分を拾い読みしていただければ、オンラインでの提出が義務づけられていることが分かっていただけるでしょうか。ちなみに、ここでの「電子情報処理組織」というのは、e-Taxのことです。

 前回に振り返ってみた、デジタル化の法律の流れでも、国税関係の電子帳簿保存法が先行して成立してますし、早くからデジタル化の取組が進んでいたわけですが、最近の動きを見ても、デジタルでの申告を義務化するという、いわば、一つ先の段階に進んでいることが分かります。そんなこんなで、国税関係のデジタル化は、とても進んでいるなあと思うわけです。

 

 ということで、国税庁へのリスペクトはここまでにして、次回こそは、IT書面一括法を見てみたいと思います。

 

(参考)

www.e-tax.nta.go.jp

www.e-tax.nta.go.jp

news.tv-asahi.co.jp