デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

学校とデジタル化:著作権、公衆送信権とは?(著作権(3))

著作権とは?)  

 著作権という言葉自体は誰でも知っていると思いますし、著作権侵害をしてしまうと損害賠償などが請求されて大変だと、なんとなくの理解はしていると思います。ただ、著作権とは何かと言われると、明確に答えるのが難しいですね。。

 著作権法の解説書などを読むと、著作権には、(狭義の)著作権著作者人格権著作隣接権ががあって、、さらに具体的な支分権があって、著作権はその束のような概念・・といった説明があるのですが、、まずは、学校のデジタル化と関係が深いものに絞って見ていきたいと思います。。

 

 その前に、まず大雑把な捉え方ですが、著作権というのは、著作物を創作した者(著作者)に与えられる、著作物の利用を許諾したり、禁止したりすることのできる権利です。著作権法では、より具体的な権利として、著作物をコピーしたり(複製権(第21条))、インターネットで発信する権利(公衆送信権(第23条))などが定められています。そして、これらの具体的な権利に触れるような行為を、著作者以外の者が行う場合には、原則、著作者の許諾を得ることが必要となります。

 著作権法で、著作者に認められる著作権については、第21条から第28条で列挙されていますが、学校のデジタル化と関係が深いのは、上記の複製権と公衆送信権です。

(複製権)
第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

公衆送信権等)
第二十三条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

 

 これらの権利について侵害があった場合には、著作権者は、侵害者に対して、侵害行為の差止請求(112条1項)や、損害賠償請求(民法709条)などを行うことができます。インターネット上の著作物の「複製」や、インターネットでの情報の発信(「公衆
送信」)を行う際には、これらに関する著作権者の権利を侵害していないか注意が必要です。

 

公衆送信権とは?) 

 公衆送信、というのは聞き慣れない言葉と思いますが、放送やインターネットなどで多くの人に対して伝達する場合を広く含む、著作権法上の用語です。最近では、書面掲示を義務付ける法律で、インターネット上でも行うように定める場合の条文などでも「公衆送信」の用語が使われています。公衆送信を行う権利が「公衆送信権」です。

 具体的な条文の定義は以下のようになっています。なお、インターネット上でアクセスがあった場合に見れるようにするのは「自動公衆送信」です。そのためにデータをアップロードすることは「送信可能化」になります。(「自動公衆送信」については、以前に記事を書いているので、そちらもご参照ください。)

 (定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
七の二 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
八 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。
九の四 自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。
九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。

 

 なお、公衆というのは、著作権法上は、「不特定の人」又は「特定多数の人」を意味します(第2条第5項)。

 インターネット上のイラストを学校だよりに掲載(複製)して、学校のHPで公開(公衆送信)すると、著作権者の複製権や公衆送信権を侵害することになりますね。。

 

 全く余談ですが、先生が授業で教室内の生徒に、You Tube動画を見せる場合は、上映になるのでしょうか? 公衆送信になるのでしょうか? 動画をDVDに焼いて、大型モニターで見せる場合、クラウドストレージサービスを利用して見せる場合、直接You Tubeを再生する場合、それぞれで違うのでしょうか? (上映権か公衆送信権かいずれかを侵害しますので、あまり考える必要はないかもしれませんし、授業の過程で使う場合には、権利制限の規定もあるので(次回以降取り上げます)、実益もないと思いますが、考えてみると理解が深まる、かもしれません。)

 ちなみに、文化庁は、「50人を超えれば多数」という考えと側聞したことがあります。。

 

(ポイント)  

著作権は、著作物を創作した者(著作者)に与えられる、著作物の利用を許諾したり、禁止したりすることができる権利。

著作権法では、より具体的な権利として、複製権(第21条)、公衆送信権(インターネット等で発信する権利)(第23条)などが定められている。

・複製権などの具体的な権利に触れる行為は、原則、著作者の許諾を得ることが必要。(著作権侵害をすると、著作権者から差止請求や損害賠償請求の可能性あり。)

 

(参考)

ura49.hateblo.jp