デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

学校とデジタル化:著作権法の考え方と著作物の定義(著作権(2))

著作権法の考え方)  

 著作権という言葉は、誰もが一度は聞いたことがあるのではないかと思いますが、著作権の保護等について定める法律が著作権法です。

 著作権法の目的は、著作権法の第1条で「文化的初産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること」と定められています。

著作権法
 (目的)
第1条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

 

 著作物が、文化の形成とその発展の基盤をなすものであることを前提として、著作物を創作した者に「著作権」という権利を与えるとともに、無許諾での利用等を防止できるよう、適切に権利の保護を図るという考え方になっています。

 著作物には、イラストなどの「絵画」も含まれますので、インターネット上にあるイラストを無断で使用すると、そのイラストの著作者に与えられている著作権を侵害するということになるわけですね。。

 

 一方で、著作権法の第1条では、公益性の高い利用など一定の場合には、社会一般の利用に供することができるよう「公正な利用に留意」することとされています。具体的には、「著作権の制限」という形で、著作物の公正な利用を図るための条文が置かれています。

 「著作権の制限」というとちょっとわかりにくいかもしれませんが、例えば、学校教育の授業は公益性が高いので、著作物を著作権者の許可なく使用しても良い、というルールが定められた場合(実際にそのような条文があるのですが)、著作権者の側から見ると、著作物が学校で使われても、学校に対して著作権を主張できなくなりますので、「著作権の制限」ということになるわけです。権利者の側から見れば制限ですが、学校側から見れば、著作物を自由に(著作権者の許可なく)使用するための根拠になる規定ということになります。

 

 著作権法では、著作権の保護に関するルールに加えて、著作権の制限に関するルールを定めることで、著作物の保護と利用のバランスを取るという考え方になっています。

 

(著作物とは?)  

 「著作物」を創作した者に著作権が与えられることはわかりましたが、では、著作権の対象となる著作物とは、どのようなものでしょうか?
 著作権法では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義しています(第2条第1項第1号)。
 「思想又は感情」を表現したものと言われても、なかなかイメージが難しいかと思うのですが、具体的には、著作権法の第10条で、著作物の種類が列挙されていますので、そちらを見てもらえるとイメージが湧きやすいと思います。

 

 (著作物の例示)
第10条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
 一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
 二 音楽の著作物
 三 舞踊又は無言劇の著作物
 四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
 五 建築の著作物
 六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
 七 映画の著作物
 八 写真の著作物
 九 プログラムの著作物
2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第1号に掲げる著作物に該当し
ない。

 

 学校だよりなどでの無断使用が問題になっている、インターネット上のイラストについては、この第1項第4号の「絵画」(美術の著作物)に当たります。また、インターネット上に掲載されているブログや写真、動画などは、言語の著作物、写真の著作物、映画の著作物に当たる可能性が高いです。

 なお、著作権には登録などの手続は不要で、創作性さえあれば自動的に発生するため、一般人が作成した文章やイラストなどにも著作権は発生します。(インターネット上で流通するコンテンツの多くには著作権があると考えておいた方がよいと思います。)

 

 学校での著作権侵害が問題となった事例は、フリー素材との誤解に基づくものが多いようですし、こうした基本的なルール自体はご存じの方も多いと思うのですが、あくまで備忘用の整理ですのdえ。。次回は、著作権の保護や制限に関する具体的な条文などを見てみたいと思います。

 

(ポイント)  

著作権法では、著作物の保護と利用のバランスを取るという考え方が取られている。(利用については「権利制限規定」が置かれている。)

・著作物の定義は幅広く、インターネット上で流通するコンテンツの多くには著作権があると考えておいた方がよい。(イラストは「美術の著作物」、ブログや写真、動画などは、「言語の著作物」、「写真の著作物」、「映画の著作物」に当たる可能性が高い。)