学校とデジタル化：著作権侵害の事例（著作権（１）） - デジタル化に関する法制度の備忘録

（学校だよりのイラストが著作権を侵害？）　　

　最近、学校で作成する文書（学校だよりなど）に、インターネット上で見つけたイラストを掲載して、著作権者から賠償を求められるという事例が多く見られます。

　つい先日、知り合いの教育関係者から、そのような事例を聞き、少し検索してみたところ、今年に入ってから報道等があったものだけでも、以下のような例が見つかりました。

2023年１月　佐賀県白石町　賠償金１１万円

2023年１月　愛媛県西伊予市　賠償金１２万１千円

2023年２月　徳島県三好市　解決金１５万円

2023年３月　岐阜県各務原市　解決金２２万円

2023年３月　岡山市　損害賠償金１８万７千円

2023年３月　千葉県山武市　損害賠償金１１万１千円

2023年５月　兵庫県明石市　解決金５万５千円

2023年８月　徳島県小松島市　損害賠償額２０万円

2023年８月　徳島県徳島市　損害賠償額２５万円

　著作権侵害で訴えられると概ね１０〜２０万円の賠償が必要になるようですね。。

　明石市の例が少し金額が低いですが、これは神戸新聞の記事によると、１７万６千円の損害賠償を求める文書が届いた後に、市は「２２年４月に学校のＨＰをリニューアルしたため、それ以降は通常の画面をたどって行っても風鈴のイラストが表示される状態になかった」などと主張し、５万５千円の支払いで合意したという経緯があったとのことです。

（具体的な報道内容など）　　

　いくつかのものは、すでに記事が見れなくなっていたりしているのですが、参考までに、確認できたものを載せておきます。学校だよりをHPで載せておいたところ、著作権者から損害賠償を求められるというケースがほとんどです。紙で限られた保護者に配布したいた場合と違って、HP上ですと多くの人が見ることができますので、問題が発覚しやすいということもあると思います。。

◯愛媛県西予市は11日、市立中学校の教員がインターネット上で公開されているイラスト1点を学校だよりに利用し、同校のウェブサイトに無断で使用していたと発表した。市によると、教員が無料と勘違いしたことが原因という。市教委は著作権侵害を認め、12万1000円を支払うことなどで和解した。（毎日新聞）

◯三好市の井川中学校が、学校ホームページ(HP)にネット上の有料イラストを無断で掲載していたことが分かった。使用条件の認識不足が原因。学校は県外の著作権者側から使用料と損害賠償の請求を受け、市は解決金15万円の支払いで合意した。（徳島新聞デジタル版　2023年２月）

◯山武市内の市立中学校の学校だよりでインターネット上のイラストを無断で使用したとして、市が著作権者の県外在住イラストレーターに１２万１千円の損害賠償金を支払ったことが１０日、分かった。同日の定例議会最終日で市が報告した。（千葉日報　2023年３月）

学校だよりのイラスト、著作権侵害で賠償金フリー素材と誤認、１２万円支払う山武市の中学校で | 千葉日報オンライン

◯兵庫県明石市立小学校の「学校だより」に、教員がインターネットで見つけた風鈴のイラストを載せた後、著作権者から損害賠償を求められ、市が解決金として５万５千円を支払っていたことが分かった。（神戸新聞NEXT　2023年５月）

「夏のイラストフリー」で検索したのに…著作権者から賠償請求学校だよりやHP掲載、明石市の小学校|明石|神戸新聞NEXT

◯徳島市教育委員会は１４日、徳島市昭和小が２０１４年に発行した児童と保護者向けの「食育だより」で、イラスト販売サイトに掲載されていた１点を無断で使用していたと発表した。人が特定のポーズを取っているイラストで、著作権者からの指摘を受け今年７月に２５万円の損害賠償金を支払ったという。（京都新聞　2023年８月）

　学校のデジタル化が進むにつれ、インターネット上で学校だよりなどが公開されることが増えてくると、著作権についても、より注意が必要になってきます。次回以降、著作権の制度を備忘的に整理していきたいと思います。

（ポイント）　　

・学校だよりなどに、インターネット上のイラストを掲載して、著作権者から賠償を求められるという事例が多く見られる。

・イラストの無断利用が著作権侵害とされた場合、概ね１０〜２０万円の賠償額となっている。