デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

学校とデジタル化:学校での著作物利用の特例(著作権(4))

(学校での著作物の利用(権利制限規定))  

 著作権法では、著作権の保護と利用のバランスが図られているというお話を、以前にしましたが、学校教育での著作物の利用については、著作権を制限する規定が定められています。(著作権が主張できる範囲が制限されると、その一方で、学校側で利用できる範囲は拡大することとなります。著作権者側からは権利制限規定ということになりますが、学校画家からは自由に利用できるための規定となりますね。)

 具体的には、著作権法の第35条で、授業のために必要な範囲内で、著作物を複製することなどが認められています。

 (学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
3 前項の規定は、公表された著作物について、第一項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合において、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信を行うときには、適用しない。

 

 学校教育では著作物を利用できるということを知っている先生も多いのですが、いろいろと要件があることを見落としていたり、学校の活動全般で利用できるとの誤解がったりすることも多いようですので、よく条文の要件を見ておくことが重要です。

 

(授業での利用のみ)  

 まず、学校で著作権を複製して利用できるのは、「授業の過程における利用に供することを目的とする場合」で、「その必要と認められる限度」での利用に限られます。また、複製等の「態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には、この規定の適用がなく、著作物を利用することはできません(第1項ただし書)。市販のドリルをクラス分まるごとコピーして使うような場合などが、著作権者の利益を不当に害する場合の例として、よく例示されています。

 

 公衆送信の場合は、基本的には有償となります(第2項)が、授業を他校と合同で行う場合や欠席した生徒に中継する場合などに、授業と同時に送信する場合には、無償となります(第3項)。ややこしいかもしれませんが、授業を受ける生徒以外に著作物を発信する場合にまで、学校教育での利用として保護する必要はありませんし、授業での利用でも、オンラインで何度も自由に見られるような状態と、教室で授業のときだけ見せる場合とでは、かなり差がありますので、前者のようなオンライン授業での利用の場合は、無許諾・有償という扱いになったのだと思います。(個人的にそう思ってるだけなので、違っていたらご指摘ください。。)

 

(学校だよりでの利用)  

 ここまで読んでいただいてもうおわかりかと思いますが、学校での著作物の利用が自由にできるのは、授業の場合のみです。学校だよりでの利用の場合は、通常の社会一般でのルールと同様になりますので、許諾等なく著作物を利用することはできないこととなります。

 文化祭での利用など、より細かいことはありますが、最も誤解の多いと思われる部分の説明にとどめたいと思います。

 

(ポイント)  

・学校の授業では、著作物を複製して利用できるが、どんな形でもよいわけではない。(必要限度を超えたり、著作権者の利益を不当に害する場合は不可。)

・オンライン授業で、著作物を公衆送信する場合は有償が基本。ただし、授業と同時に生徒に中継する場合などは無償。

・学校だよりに著作物を利用する場合は、特例的な定めはない。