デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第211回国会のデジタル関係法(17)不正競争防止法等の改正

不正競争防止法等の一部を改正する法律)

 今年の通常国会で成立した法律のうち、デジタル関係の法改正を見ていく17回目です。今回は、閣法54号として提出された「不正競争防止法等の一部を改正する法律」について見てみます。

 提出理由は、以下の通りです。

知的財産の適切な保護及び知的財産制度の利便性の向上並びに国内外における事業者間の公正な競争の確保を図るため、他人の商品の形態の模倣となる対象行為の拡充及び商標権者の同意に基づく類似する商標の登録制度の創設を行うとともに、意匠の新規性喪失の例外の適用に係る証明手続の簡素化及び特許等の国際出願に係る優先権主張の手続の電子化を行うほか、外国公務員贈賄罪の罰金額の上限の引上げ等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

 経済産業省から提出されている法律です。提出理由を見る限り、「手続の電子化」とあるくらいで、あまりデジタル化と関係なさそうなのですが、概要を見てみたところ、大いにデジタル化に関係のある改正内容でした。

 

(改正の概要)

 法案の概要のHPを見ると、改正の概要として、以下の項目が記載されています。

(1)デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化
 ①登録可能な商標の拡充
 ②意匠登録手続の要件緩和
 ③デジタル空間における模倣行為の防止
 ④営業秘密・限定提供データの保護の強化
(2)コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続等の整備
 ①送達制度の見直し
 ②書面手続のデジタル化等のための見直し
 ③手数料減免制度の見直し
(3)国際的な事業展開に関する制度整備
 ①外国公務員贈賄に対する罰則の強化・拡充
 ②国際的な営業秘密侵害事案における手続の明確化

 これらのうち、デジタルと関係の深いのは、まず(1)の③④で、デジタル空間における他人の商品形態を模倣した商品の提供行為も不正競争行為の対象とし差止請求権等を行使できるようにすることや、ビッグデータを他社に共有するサービスにおいて、データを秘密管理している場合も含め限定提供データとして保護し不正競争防止法に基づく侵害行為の差止め請求等を可能とすることなどが定められています。

 なお、ビッグデータを想定した「限定提供データ」の不正取得等が不正競争行為として規定されたのは、2018年の不正競争防止法改正でした。(以前の記事で、少し紹介しています。)

ura49.hateblo.jp

 

 また、(2)の「①送達制度の見直し」では、インターネットを通じた送達制度が定められています。これは、デジタル社会形成基本法と合わせて改正された書面掲示規制の一括見直し(デジタル規制改革推進一括法)と同種の改正です。②の「書面手続のデジタル化等のための見直し」は、その文言の通りですが、手続のデジタル化に関する規定の整備が行われています。

 詳細は、経産省のHPをご参照ください。

www.meti.go.jp