デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

学校とデジタル化:文化祭の展示のBGMとしての再生(著作権(10))

(文化祭の展示のBGMとして音楽の再生はできるか?)

 似たような話を何度もしている気がしますが、かなり以前に、文化祭の展示スベースのBGMとして音楽CDを再生しても大丈夫か? という話になったことがあります。

 文化祭は、学習指導要領上の「特別活動」で、「授業の過程における利用」だから第35条で・・、となりそうですが、この場合は、「営利を目的としない上演等」(38条)となるので、許可などの手続きは不要です。

 (営利を目的としない上演等)
第三十八条 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。

 

 この第38条は「非営利・無料」の場合の著作物の上演、演奏、上映等については、著作権者の許諾なく行うことができるという内容で、以前の記事でも確認しましたが、CDの音源を再生する場合も著作権法上は「演奏」に当たります。(第2条第7項参照)

 (定義)
第2条 (略)

7 この法律において、「上演」、「演奏」又は「口述」には、著作物の上演、演奏又は口述で録音され、又は録画されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く。)及び著作物の上演、演奏又は口述を電気通信設備を用いて伝達すること(公衆送信に該当するものを除く。)を含むものとする。

 

ura49.hateblo.jp

 

(文化祭の展示でYouTubeをBGM的に流すことは可能か?)

 また、そのときに、CDでなくてネット上の動画ならどうか? という話も出ました。なぜそんなにYouTubeを流したがるのか、、と思いましたが、英語部で海外の動画を流したり、鉄道研究会(部)で鉄道系ユーチューバーの動画を流したりしたいのでしょうか? まあ、そういう需要もあるのかもしれませんね。。

 この場合、ラジオ・テレビ放送や、同時配信などであれば、第38条第3項の対象となるわけですが、自動公衆送信(インターネットの動画サイトなどでの視聴)は含まれていませんね。。

 (営利を目的としない上演等)
第三十八条 
3 放送され、有線放送され、特定入力型自動公衆送信が行われ、又は放送同時配信等(放送又は有線放送が終了した後に開始されるものを除く。)が行われる著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、受信装置を用いて公に伝達することができる。通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする。

 

 ですが、文化祭は学習指導要領上「特別活動」という「授業」に当たるため、第35条にある「授業の過程における利用」ということで、(必要な限度で)動画等を受信装置(PC等)で流す(伝達する)ことができます。

 (学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

2・3 (略)

 ただ、形式的には、上記のとおりですが、「必要と認められる限度」という限定がありますし、利用規約などに反する形になると「著作権者に利益を不当に害する」ということにもなりかねませんので、なんでもあり、ということではなくて、展示の趣旨や教育的効果(というと大げさですが)なども踏まえて適切に判断することが必要になると思います。

 

(ポイント)  

・文化祭の展示での音楽CDの再生は、著作権者の許諾なく行うことが可能。

・文化祭の展示も「特別活動」という「授業の過程」のため、第35条の対象となる。(というのが基本だが、「必要と認められる限度」など適切に判断する必要がある。)

 

(参考)

www.bunka.go.jp