デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

学校教育の情報化の推進に関する法律(2019年)について

(どんな法律なのか)

 学校教育の情報化の推進に関する法律は、学校教育の情報化の推進に関して、基本理念や、国、地方公共団体等の責務について定める法律で、学校教育の情報化の推進に関する計画の策定などについても規定されています。

 このように、いわば学校教育の情報化に関する基本法のような内容の法律となっています。

 

(法律の趣旨)

 この法律は、いわゆる議員立法として提案されていますが、この法案が提出された際の国会の議事録を見ると、以下のような提案理由説明が行われています。

盛山議員 ただいま議題となりました学校教育の情報化の推進に関する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 近年、情報通信技術であるICTを活用した教育について、教育の質の向上や教育格差の是正に果たす役割が注目されており、地方公共団体や学校においては、ICTを活用した学習活動の充実に向けたさまざまな取組が行われてきております。ICTについては、時間的、空間的制約を超えること、双方向性を有することなどがその特性とされており、学校においても、このような特性を効果的に活用し、子供たちの興味、関心を高め、理解しやすい授業などを実現することが重要であります。
 この点、学校教育法が昨年改正され、本年四月から新たにデジタル教科書の使用が認められるようになったことから、今後は、デジタル教科書の活用により、子供たちの理解が進むとともに、多様な学習ニーズへの対応が期待されているところです。
 その一方で、ICTの活用を進めるに当たっては、授業での効果的な利用が期待される質の高いデジタル教材が不足していること、ICT機器の整備や校内ネットワーク等の構築にコストがかかり、地域によってその整備状況に差異が生じていることなどが課題となっております。
 そこで、本案は、全ての児童生徒がその状況に応じて効果的に教育を受けることができる環境の整備を図るため、学校教育の情報化の推進化に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、学校教育の情報化の推進に関する計画の策定その他の必要な事項を定めるものであり、その主な内容は次のとおりであります。
 第一に、学校教育の情報化の推進に当たっての基本理念として、ICTの特性を生かし、児童生徒の能力、特性等に応じた教育や双方向性のある教育等の実施による知識及び技能の効果的な習得、デジタル教材による学習とデジタル教材以外の学習を組み合わせるなどの多様な方法による学習の推進、家庭の経済的な状況等にかかわりなく全ての児童生徒が学校教育の情報化の恵沢を享受できることなどを定めることとしております。
 第二に、学校教育の情報化の推進に関し、国、地方公共団体及び学校の設置者の責務を定めるとともに、政府は、学校教育の情報化の推進に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならないこととしております。
 第三に、文部科学大臣は、学校教育の情報化の推進に関する基本的な方針、期間、目標等を定めた学校教育情報化推進計画を策定することとしております。また、都道府県及び市町村は、国の計画を基本として、その地域における計画を策定するよう努めることとしております。
 第四に、学校教育の情報化の推進に関する基本的施策として、デジタル教材等の開発及び普及の促進、適切な内容のデジタル教材をデジタル教科書として使用するための教科書制度の見直し、障害のある児童生徒の教育環境の整備等の施策を講ずることとしております。
 最後に、本案は、公布の日から施行することとしております。
 以上が、本法案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 

 第一から第四のところを見ると、理念規定、国や自治体の責務、計画の策定、基本的施策と、いずれも基本法で典型的に置かれるような内容となっていますね。

 

(主な規定)

 まず、法律の目次は以下のようになっています。ほぼ基本法ですね。

目次
第一章 総則(第一条―第七条)
第二章 学校教育情報化推進計画等(第八条・第九条)
第三章 学校教育の情報化の推進に関する施策(第十条―第二十一条)
第四章 学校教育情報化推進会議(第二十二条)
附則

 主な規定としては、基本理念に関する規定を引用しておきたいと思います。学校教育の情報化を進める上での基本的な考え方が、留意事項等も含めて端的に整理されていると思います。

(基本理念)
第三条 学校教育の情報化の推進は、情報通信技術の特性を生かして、個々の児童生徒の能力、特性等に応じた教育、双方向性のある教育(児童生徒の主体的な学習を促す教育をいう。)等が学校の教員による適切な指導を通じて行われることにより、各教科等の指導等において、情報及び情報手段を主体的に選択し、及びこれを活用する能力の体系的な育成その他の知識及び技能の習得等(心身の発達に応じて、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力を育み、主体的に学習に取り組む態度を養うことをいう。)が効果的に図られるよう行われなければならない。
2 学校教育の情報化の推進は、デジタル教科書その他のデジタル教材を活用した学習その他の情報通信技術を活用した学習とデジタル教材以外の教材を活用した学習、体験学習等とを適切に組み合わせること等により、多様な方法による学習が推進されるよう行われなければならない。
3 学校教育の情報化の推進は、全ての児童生徒が、その家庭の経済的な状況、居住する地域、障害の有無等にかかわらず、等しく、学校教育の情報化の恵沢を享受し、もって教育の機会均等が図られるよう行われなければならない。
4 学校教育の情報化の推進は、情報通信技術を活用した学校事務の効率化により、学校の教職員の負担が軽減され、児童生徒に対する教育の充実が図られるよう行われなければならない。
5 学校教育の情報化の推進は、児童生徒等の個人情報の適正な取扱い及びサイバーセキュリティ(サイバーセキュリティ基本法(平成二十六年法律第百四号)第二条に規定するサイバーセキュリティをいう。第十七条において同じ。)の確保を図りつつ行われなければならない。
6 学校教育の情報化の推進は、児童生徒による情報通信技術の利用が児童生徒の健康、生活等に及ぼす影響に十分配慮して行われなければならない。

 

 この法律も、デジタル手続法が制定された2019年に成立しています。2020年前後には、様々な法制度のデジタル化が大きく進んだことを改めて認識できました。

 

(参考)

ura49.hateblo.jp