デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

地方自治法とキャッシュレス

地方自治体への納付のキャッシュレス化)

 行政キャッシュレス化法の制定について紹介をした際に、ある高名な方のブログの受け売りで、地方自治体では、すでに地方自治法が改正されて、キャッシュレスでの支払いが認められているということを書きました。

 その後、少しこのことを調べてみましたので、この機に、備忘的に書き残しておきたいと思います。

 

地方自治法の改正)

 総務省のHPで、地方自治制度の歴史という年表のようなページを見ると、平成18年(2006年)の欄に以下のような記載がありました。

 

地方自治法改正
5.財務会計制度の見直し (クレジットカード納付、行政財産の貸付範囲の拡大 等)

 

 どうやら、まず2006年度に、クレジットカードでの納付が認められているようです。

 具体的な改正条文を見てみると、第二百三十一条の二に以下の2項が追加されていました。この「指定代理納付者制度」により、クレジットカード払いは可能となっていました。

 

6 普通地方公共団体は、納入義務者が、歳入の納付に関する事務を適切かつ確実に遂行することができる者として政令で定める者のうち当該普通地方公共団体の長が指定をした者(以下この項及び次項において「指定代理納付者」という。)が交付し又は付与する政令で定める証票その他の物又は番号、記号その他の符号を提示し又は通知して、当該指定代理納付者に当該納入義務者の歳入を納付させることを申し出た場合には、これを承認することができる。この場合において、当該普通地方公共団体は、当該歳入の納期限にかかわらず、その指定する日までに、当該歳入を当該指定代理納付者に納付させることができる。

7 前項の場合において、当該指定代理納付者が同項の指定する日までに当該歳入を納付したときは、同項の承認があつた時に当該歳入の納付がされたものとみなす。

 

 その後、電子マネーなどでの手数料等の支払いについても、電子マネー事業者を指定代理納付者に指定することで可能という解釈が示されていましたが、2021年に、「指定納付受託者制度」に改められ、「電子情報処理組織を使用して行う指定納付受託者」と明記されたことで、電子マネーQRコード決済の方法が可能である旨がより明確化されています。

 

(指定納付受託者に対する納付の委託)
第二百三十一条の二の二 普通地方公共団体の歳入(第二百三十五条の四第三項に規定する歳入歳出外現金を含む。以下「歳入等」という。)を納付しようとする者は、次の各号のいずれかに該当するときは、指定納付受託者(次条第一項に規定する指定納付受託者をいう。第二号において同じ。)に納付を委託することができる
一 歳入等の納付の通知に係る書面で総務省令で定めるものに基づき納付しようとするとき。
二 電子情報処理組織を使用して行う指定納付受託者に対する通知で総務省令で定めるものに基づき納付しようとするとき。

(指定納付受託者)
第二百三十一条の二の三 歳入等の納付に関する事務(以下「納付事務」という。)を適切かつ確実に遂行することができる者として政令で定める者のうち普通地方公共団体の長が総務省令で定めるところにより指定するもの(以下「指定納付受託者」という。)は、総務省令で定めるところにより、歳入等を納付しようとする者の委託を受けて、納付事務を行うことができる。
2〜4 (略) 

 

 こうした経緯を経て、現行の地方自治法の第231条の2の2で、地方自治体への納付を行う者が、「指定納付受託者」に納付を委託できることが規定されています。この「指定納付受託者」には、クレジットカード会社や電子マネー事業者、コンビニ等などが想定されています。

 次の第231条の2の3では、「指定納付受託者」について定めています。まず、納付事務を適切・確実に実施できる事業者の要件を政令で定めておいて、その政令で定められた要件を満たす事業者からの申請を踏まえて、各自治体は、「指定納付受託者」を指定する・・・って、前回見たキャッシュレス法の条文と同じ仕組みですね!ここに先例があったんですね。。

 

電子マネーでの納付する方法)

 地方自治法施行規則には、より細かい規定が置かれています。

第十二条の二の四 地方自治法第二百三十一条の二の二第一号に規定する総務省令で定めるものは、歳入等(同条に規定する歳入等をいう。以下同じ。)の納付の通知に係る書面であつてバーコードの記載があるものとする。
2 地方自治法第二百三十一条の二の二第二号に規定する総務省令で定めるものは、次に掲げる事項の通知とする。
一 歳入等の納付の通知に係る書面の記載事項その他の当該歳入等を特定するために必要な事項
二 次に掲げるいずれかの事項
イ クレジットカードの番号及び有効期限その他当該クレジットカードを使用する方法による決済に関し必要な事項
ロ 電子情報処理組織を使用して番号、記号その他の符号を通知する方法(イに規定する方法を除く。)による決済に関し必要な事項

 

 まず、第1項のバーコードの記載のある納付書での支払いは、コンビニ払いを想定した規定です。次の第2項の第2号のイがクレジットカード決済、ロがQRコード決済を想定した規定となっています。

 

 とりあえず、気になっていた地方自治体の状況もある程度分かりましたので、キャッシュレス関係については、これで終わります。関係の法制度がなんとなく分かるには、これでもう十分かな、となんとなく思っています。

 

(参考)

www.soumu.go.jp