デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第212回国会のデジタル関係法(2)社債、株式等の振替に関する法律等の改正

社債、株式等の振替に関する法律等)

 第212回国会で成立した法律のうち、デジタル関係の法改正を見ていくという試みの第2回目ですが、今回も、211回国会からの継続案件となっていた「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案」について見てみます。

 提出理由は、以下の通りです。

近年の情報通信技術の進展及び投資者の多様化をはじめとする資本市場を取り巻く環境の変化に対応し、資本市場の効率化及び活性化を図るため、特別法人出資証券のデジタル化、既存株主の口座情報を求める通知に係る期間の規定の見直し等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

 この赤文字の部分にある、証券のデジタル化に関する「社債、株式等の振替に関する法律」の改正のほか、デジタル化の進展等に対応するための、いくつかの法改正が行われています。

 

(デジタルに関する改正の概要)

 今回の改正の概要資料を見ると、「デジタル化への対応」として、以下のような内容が記載されています。

■取引所に上場している有価証券の中で唯一デジタル化されていない日銀出資証券のデジタル化
【改正内容】
• 日銀出資証券を含む特別法人出資証券を振替制度の対象に追加

 

投資法人特定目的会社有限責任監査法人登録簿等(項目例:役員や営業所等の情報)のインターネット公表
【改正内容】
• インターネット公表に際して、個人情報(役員の住所)を除くための規定を整備

 

■財務書類の虚偽証明等を行った公認会計士等に対する課徴金納付命令に係る審判手続のデジタル化
【改正内容】
• オンラインによる送達・申立て、オンライン会議による審判手続、事件記録の電子化

 

(具体的な条文など)

 改正内容の1つ目にある「社債、株式等の振替に関する法律」の改正は、「出資証券の不発行」のようなものですので、2つ目の名簿のインターネット公表に関するものを見てみたいと思います。

 

(登録の実施)
第百八十九条
3 内閣総理大臣は、投資法人登録簿(公衆の縦覧に供することにより個人の権利利益を害するおそれがあるものとして内閣府令で定める部分を除く。)を公衆の縦覧に供しなければならない。

 

 上記は、投資信託及び投資法人に関する法律」の例ですが、今回の改正で下線部が追加されています。この規定に基づいて、役員の住所を「個人の権利利益を害するおそれがあるものとして内閣府令で定める」ことで、インターネット公表の対象から除くことができるようにする、という趣旨の改正となっています。

 

 なお、改正内容の3つ目の審判手続のデジタル化は、民事訴訟手続のデジタル化を含む改正民事訴訟法が2022年に成立したことを踏まえたものとなっています。(前回ご紹介した金融商品取引法と同じですね。)

 

(参考)

www.fsa.go.jp

ura49.hateblo.jp

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