デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

デジタル手続法について(2)申請等のデジタル化

(前回の続き)

 デジタル庁の所管する法律の一つに、デジタル手続法という法律があります。この法律で定められた「デジタル化の基本原則」を紹介する記事や動画は見たことがありますが、それ以外は、あまり取り上げられることもないようです。

 そこで、実際にも重要な機能を役割を果たしている、具体的な行政手続のデジタル化に関する規定について、目立たないところで大きな役割を果たしていることへのリスペクトの気持ちも込めて、その具体的な条文を順次見ていきたいと思います。

 

(申請等のデジタル化)

 デジタル手続法では、書面が原則の行政手続について、オンライン化等を行うことができるようにする規定が、第6条から第9条まで置かれています。

 まず、第6条では、申請等のデジタル化について、以下のように定めています。

 

(電子情報処理組織による申請等)
第六条 申請等のうち当該申請等に関する他の法令の規定において書面等により行うことその他のその方法が規定されているものについては、当該法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、主務省令で定める電子情報処理組織(行政機関等の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)とその手続等の相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。次章を除き、以下同じ。)を使用する方法により行うことができる
2〜6 (略)

 

 書面等で行うこととされている申請等について、各省庁が省令等で定めることで、情報システムを利用したオンラインの方法で行うことができる、ということが書かれています。赤字の部分を読んでいただけるとなんとなく分かりやすいでしょうか。。

 なお、「電子情報処理組織」については、カッコ内の説明の通りですが、「情報システム」のことという程度に理解しておけばいいのではないかと思います。

 

(できる規定)

 デジタル手続法の仕組みですが、行政手続のオンライン化等が可能である旨を定める「できる規定」になっています。より詳しく書くと、デジタル手続法に基づいて、直接オンライン化等が可能となるわけではなく、各省庁が省令等で定めることでオンライン化ができるような仕組みになっています。

 例えば、ある法律で書面での申請や届出が定められていると、その法律の下の省令等では、(省令は、法律の範囲内でしか定められませんので、)オンラインでの申請や届出の方法を定めることができません。ですが、デジタル手続法の規定に基づいて、省令等で定めることで、そのような場合にも、申請や届出のオンライン化ができるようになる、という仕組みです。

 元の法律の規定ではできないけど、別の法律で定めることでデジタル化ができるようにするという仕組みは、以前にご紹介したキャッシュレス法でも、同様の仕組みになっています。

 

(キャッシュレスの規定)

 ちなみに、この第6条の第5項では、申請等に関する手数料の納付について、デジタル化(キャッシュレス化)が可能であることが定められています。

 デジタル庁のHPで、キャッシュレス法案の概要説明資料を見ると、「※ 申請等がオンラインで行われる場合については、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律で措置済み。」という記載があるのですが、それは、この条文のことを指しているのですね。

 ただし、デジタル手続法での対応は、申請等に関するもののみになりますので、例えば、行政から納付書を送付するような場合には、対象となりません。やはりキャッシュレス法を制定して対応する必要があったわけですね。そりゃそうか。

 

 キャッシュレス法のご紹介をしたときにも書きましたが、デジタル手続法でも、デジタル化の裁量は各省庁に委ねられていますので、各省庁の取組状況のフォローアップが重要になります。この点については、「行政手続等の棚卸調査」という、約6万の行政手続等を対象にした膨大な調査を、デジタル庁で行っています。この調査、生データのエクセル表が公開されていますし、機会があれば、ご紹介したいと思いますが、とりあえず今回はこれで。

 

(参考)

www.digital.go.jp

cio.go.jp

ura49.hateblo.jp