デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

IT基本法(2000年)について

(IT基本法とは?)

 「IT基本法」とは、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関して、基本理念と基本的な施策の枠組みを定めた法律です。正式名称は、「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」となっています。

 「IT基本法」は、前回まで7回にわたって内容を見てきた「IT書面一括法」と同じく第150回国会に提案され、2000年に成立しています。(2000年といえば、当時の森首相が、IT革命について、「このイット革命って何だ?」と言ったとか、言わないとか、そんな都市伝説が世間を賑わわせていた頃ですね。。)

 前回までご紹介した「IT書面一括法」では、個々の法律のデジタル化に関する改正が行われましたが、「IT基本法」は、デジタル化(とは、当時はいってませんが)に関する基本理念等を定める法律です。当時の法制度として、一体的に理解しておく方がよいと思いますので、すでに廃止された法律ではありますが、今回ごく簡単に内容を見ておきたいと思っています。

 

(趣旨、構成)

 IT基本法の趣旨ですが、第1条の目的規定を見ると、以下のようになっています。

 

(目的)

第一条 この法律は、情報通信技術の活用により世界的規模で生じている急激かつ大幅な社会経済構造の変化に適確に対応することの緊要性にかんがみ、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関し、基本理念及び施策の策定に係る基本方針を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにし、並びに高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部を設置するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画の作成について定めることにより、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進することを目的とする。

 

 当時、世界的規模で生じていた、情報通信技術の活用による、急激かつ大幅な社会経済構造の変化(IT革命)に対応するために、「高度情報通信ネットワーク社会の形成」という目標を掲げ、基本理念や施策の基本方針を定めていることが分かりますね。

 また、青字の部分にあるように、内閣官房へのIT戦略本部の設置と、IT戦略本部が重点計画を作成することは、この法律の重要な構成要素となっています。

 ちなみに、「IT基本法」の構成は以下のようになっています。先程の第1条の赤字の部分、青字の部分と目次とを見比べていただくと、第1条の目的規定と法律の構成が、きれいに対応していると分かりますね。(基本理念は、総則の第3条から第9条で定められています。)

 

目次

 第一章 総則(第一条―第十五条)

 第二章 施策の策定に係る基本方針(第十六条―第二十四条)

 第三章 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(第二十五条―第三十四条)

 第四章 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画(第三十五条)

 附則

 

(IT戦略本部の設置)

 先にも書きましたが、IT基本法により、内閣官房にIT戦略本部が設置され、我が国のデジタル化の推進に重要な役割を果たしてきました。

 その後、2021年のデジタル社会形成基本法の制定に伴って、IT基本法は廃止され、IT戦略本部も廃止されましたが、同時に、デジタル庁設置法の制定によりデジタル庁が設置されました。IT戦略本部の多くの業務は、現在、デジタル庁に移管されています。

 

 ごく簡単な紹介でしたが、IT基本法については、とりあえず、以上にしたいと思います。基本法を作って、推進組織を設置して、関連の個別法の改正も行うというのは、昨年、デジタル社会形成基本法の制定やデジタル庁を設置した2021年の法整備と似ていますね。

 ところで、2000年当時、イット革命に大いに衝撃を受ける一方で、もし自分が「IT革命って何だ?」と聞かれたら答えらるのかな、という一抹の不安がありました。。私も含め、そうした不安のある方は、このIT基本法の目的規定を参考にすればいいですね。そういう意味でも、このIT基本法の成立は、とても意義深いものだったと、僕は思っています。

 

(参考)

hourei.ndl.go.jp

www.chukei-news.co.jp