(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)
今年の通常国会で成立した法律のうち、デジタル関係の法改正を見ていく5回目ですが、今回は、閣法23号として提出された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス保護新法)について見てみます。
こちらも、前回の日本語教育機関認定法と同じく、新しい法律を制定するもので、提出理由は以下のようになっています。
我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、特定受託事業者に業務委託をする事業者について、特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
なんとなく、分かったような、分からないような・・・という気がするのは、僕が労働法令を全くわかってないからなんですが、おそらくは、フリーランスの方には、労働基準法などがで起用されませんし、下請法などでは適用範囲が限られているので、このような新しい法律を作って保護することが必要ということなんだろうと推察します。
(法律の概要)
このフリーランス保護新法(正式の略称は長いので適当です)ですが、以下のようなことが定められています。
1.対象となる当事者・取引の定義
2.特定受託事業者に係る取引の適正化
3.特定受託業務従事者の就業環境の整備
4.違反した場合等の対応
5.国が行う相談対応等の取組
概要資料(https://www.cas.go.jp/jp/houan/230224/siryou1.pdf)を見ると、「2.特定受託事業者に係る取引の適正化」の中で、特定受託事業者への委託の内容等を「書面又は電磁的方法により明示する」ということが定められているようです。
2.特定受託事業者に係る取引の適正化
(1)特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額等を書面又は電磁的方法により明示しなければならないものとする。
なお、「特定受託事業者」とは、「業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないものをいう」と定義されています。
(具体的な規定ぶり)
具体的な規定振りを見てみると、以下のようになっていました。(まだ、e-Govにデータが反映されていないため、法案の資料からの抜粋です。)
(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
第三条 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。
2 業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。
「電磁的方法」というのは、よく見られる規定ぶりですが、民民間の取引で、書面に代えて電磁的方法が認められる場合には、相手方の承諾を要件とするものが大多数です。ですが、この法律では、最初から、「書面又は電磁的方法」が認められており、相手方から求められたときには、書面を交付するという、いわば「オプトアウト」の方式で定められているところが、素晴らしいなと思いました。(個人的感想です。)
なお、この法律の施行日は、まだ未定です。
内閣官房の提出というのが、ちょっと意外だったのですが、昨年6月の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(閣議決定)で、フリーランスの取引適正化のための法制度の検討が盛り込まれていたことなどが背景にあるのかな、と思います。(個人的感想です。もし違ってたらご指摘をお願いします。。)