デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第211回国会のデジタル関係法(12)刑事訴訟法の改正

刑事訴訟法等の一部を改正する法律)

 今年の通常国会で成立した法律のうち、デジタル関係の法改正を見ていく12回目です。今回は、閣法41号として提出された「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」について見てみます。

 提出理由は、以下の通りです。

刑事手続において犯罪被害者等の情報を保護するため、犯罪被害者等の個人特定事項の記載がない起訴状抄本等を被告人に送達する措置等を導入するとともに、被告人や刑が確定した者の逃亡を防止し、公判期日等への出頭及び裁判の執行の確保を図るため、位置測定端末により保釈された者の位置情報を取得する制度を創設し、逃走の罪の構成要件及び法定刑を改めるなどの処罰規定の整備を行うほか、拘禁刑以上の実刑の言渡しを受けた者等が出国により刑の執行を免れることを防止するための制度の創設等を行う必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

 この「位置測定端末により位置情報を取得する制度の創設」というのは、どんなものなのでしょうか? GPSでも位置情報の取得に関しては、令和3年(2021年)のストーカー規制法の改正で、無断での位置情報の取得が規制されていますが、今回は、国の側で保釈中の人などにGPSをつけて位置情報を取得する形ですね。アメリカでは、性犯罪者に発信機がつけられるなどと聞いたことがありますが、それに近いような感じでしょうか。。

 

(位置測定端末により位置情報を取得する制度)

 刑事訴訟法の改正については、概要資料がないので、要項から該当部分の項目を抜粋を見ると、以下のとおりとなっています。

7 位置測定端末により保釈されている被告人の位置情報を取得する制度の創設
(1)位置測定端末装着命令(第九十八条の十二第一項、第二項)
(2)位置測定端末の機能等(第九十八条の十二第三項、第四項)
(3)位置測定端末の装着(第九十八条の十三)
(4)位置測定端末装着命令を受けた者の遵守事項等(九十八条の十四第一項、第二項)
(5)所在禁止区域内に所在すること又は位置測定端末を自己の身体に装着しないでいることの許可(第九十八条の十五)
(6)位置測定端末装着命令の取消し・失効(第九十八条の十六、第九十八条の十七)
(7)被告人の身柄の確保のための措置(第九十八条の十七〜第九十八条の十九)
(8)端末位置情報の閲覧(第九十八条の二十、第九十八条の二十二等)
(9)罰則(第九十八条の二十四)

 

 位置測定端末の定義などは、第98条の12あたりに置かれていそうですね。

 僕が知らないだけかもしれませんが、位置情報端末を法令で明文化したのは、これが初めてではないかと思います。

 

(改正後の条文)

 今回の改正によって新設された第98条の12では、「位置測定端末」について、以下のような定めが置かれています。

第九十八条の十二 裁判所は、保釈を許す場合において、被告人が国外に逃亡することを防止するため、その位置及び当該位置に係る時刻を把握する必要があると認めるときは、被告人に対し、位置測定端末(人の身体に装着される電子計算機であつて、人工衛星から発射される信号その他これを補完する信号(第三項第一号において「人工衛星信号等」という。)を用いて行う当該電子計算機の位置及び当該位置に係る時刻の測定(以下「位置測定」という。)に用いられるものをいう。以下同じ。)をその身体に装着することを命ずることができる。
③ 位置測定端末は、次に掲げる機能及び構造を有するものでなければならない。
一 位置測定のために必要な人工衛星信号等を受信する機能
二 次に掲げる事由の発生を検知する機能
 イ 位置測定端末が装着された者の身体から離れたこと。
 ロ 位置測定に関して行われる信号の送受信(以下「位置測定通信」という。)であつて位置測定端末に係るものが途絶するおそれがある事由として裁判所の規則で定めるもの
 ハ ロに掲げる事由がなくなつたこと。
 ニ イからハまでに掲げるもののほか、位置測定端末を装着された者の本邦からの出国を防止し、又はその位置を把握するために位置測定端末において検知すべき事由として裁判所の規則で定めるもの
三 前号に掲げる事由の発生が検知されたときは、直ちに、かつ、自動的に、位置測定端末を装着された者に当該事由の発生を知らせるとともに、第五項の閲覧設備において当該事由の発生を確認するために必要な信号を、直接に又は次項の位置測定設備を経由して、第五項の閲覧設備に送信する機能
四 人の身体に装着された場合において、その全部又は一部を損壊することなく当該人の身体から取り外すことを困難とする構造
五 前各号に掲げるもののほか、位置測定に関して必要な機能又は構造として裁判所の規則で定めるもの

 

 「位置測定端末」の定義(人の身体に装着される電子計算機であつて、人工衛星から発射される信号その他これを補完する信号を用いて行う当該電子計算機の位置及び当該位置に係る時刻の測定に用いられるもの)や、備えるべき機能について、定められていますね。

 施行日は未定のようですが、引き続き関心を持って見守りたいと思います。

 

(参考)

www.clb.go.jp